My thoughts on interpretation
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先月より福岡市の通訳学校で、毎週末にクラスを担当しています。
以前、この学校で私も「逐次通訳・同時通訳」を生徒の立場で学んでいました。
教える側に立つ機会を頂き改めて「通訳」の難しさ、そして楽しさを感じています。
「通訳」に関して言えること、それは…。
英語を(ある程度)不自由なく話せる所まで達すると、脳内で英語⇆日本語の変換は行われず、英語を英語で考えることができます。
「通訳」の訓練は英語⇆日本語の切替を常に脳内で行わなければならない。
すなわち、全く別の訓練が必要になるということです。
英語のみで会話をしている時、ふいに「それって日本語で何ていう意味?」と聞かれると戸惑うことがあります。
英会話上級者であればあるほど、即答出来ないのではないでしょうか。
これは英語を英語で考えていることが出来ている証しです。
逐一頭の中で日本語から訳しているわけではないので、日本語訳がすっと出てこないのです。
通訳学校に通い始めの頃は、この切り替えが非常に難しく感じます。
通訳を学ぶ方々にとって乗り越えなければならない困難な壁の一つではないでしょうか。
同時通訳ではスピードと日本語力が求められる。
特に同時通訳*ではスピードを求められますので、淀みなく訳出をする必要があります。
逐次通訳:「逐次」とは「順を追って、順番どおり次々と」という意味。
話者が話した言葉を追いかける形で順次訳していく。
話者は話を区切り、通訳者は自分の記憶とメモを駆使し話者の話した内容を「逐次」正確に訳します。同時通訳:言葉のとおり、話者の話を聞きながら通訳者が同時に訳すこと。 話者と同時に通訳者も喋ります。したがって訳すスピードが求められます。
当初一番に痛感したのは、自身に日本語力が足りないということ。
授業の中では政治、経済、社会、環境など様々なトピックを扱います。
日常会話では耳にしないような専門用語が頻繁に出てきます。
英会話講師という職業柄、日常的に日本語よりも英語を話す割合が多い環境です。
特に当初は、日本語力が欠如しているのを痛感させられました。
背景知識と的確な翻訳の重要性。
新聞や雑誌、本などを多読することを心掛けています。
加えて大切なのが、背景知識。
様々な分野の背景知識があると、通訳の作業において足りない言葉を補うことが出来ます。
多くの選択肢の中から最も適切な言葉と表現を選ぶということは、日本語を母国語としている方でも簡単にできることではありません。
例えば、”die-hard Moomin fans” を訳す場合。
「熱狂的なムーミンファン」
「筋金入りのムーミンファン」
「根っからのムーミンファン」
・・・
といった具合に、様々な日本語訳があります。
複数の表現からその文脈に、しっくり合った和訳を見つける作業。
翻訳の場合ですと時間をかけて厳選し、最適な訳を見つけることが出来ます。
しかし通訳となると的確な訳をスムーズに発話することが重要視されます。
脳をフル回転させるわけですから大変ではありますが、楽しかったりもします。
スルリと出てきた言葉が前後関係にしっくりとハマった瞬間の快感は得難いものです。
トレーニングには隙間時間の活用が有効。
通訳学校の授業では膨大な宿題が出されます。
金曜日まで仕事をしてその合間に宿題をし、休日である土曜日に3時間超の授業に臨む。
生徒さんにとって、かなりの負担になるのは間違いありません。
教える立場の私も、授業が終わった後は毎回ふらふらです。苦笑
それにも関わらず、皆さんとても熱心に準備をされて授業に望まれます。
先日、「あまりにも大変すぎて英語が嫌いになるかもしれない・・・」という相談を受けました。
私自身同じ立場にいたので、その気持ちは痛いほど分かります。
生活の中の隙間時間に「通訳」を意識したトレーニングを自然に取り入れるのが大切かもしれません。
私の場合は…。
・NHKニュースを日本語、英語両方で聴きながらシャドーイングをする。(時間が取れないので毎朝髪を乾かす時にイヤフォンで行なっています。)
・スマホで様々な短い新聞記事(日英両方)を読みながら声に出して訳出する。(空き時間の5分程度)
出来る限り毎日心がけています。
加えて、毎週末の(長時間)バス移動中にTED*などのスピーチを聴きながら脳内訳出をしています。(たまに寝てしまっていますが。苦笑)
※ TED(Technology Entertainment Design)
毎年、世界的著名人の大規模な講演会を主催・配信している非営利団体。
本当はもっと必要なのですが、時間的に厳しいので。。。
特に「同時通訳」の場合には、同時進行しながらトレーニングを行うと効果的です。
私の恩師は日本語のニュースを聞きながらTIME紙を読み、同時に理解するという神業を日常的にされています!
言葉遊びを楽しむ感覚で、ストレスにならない程度に行うのが長続きの秘訣かもしれませんね。